1.異変

2/34
78139人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
吹き抜ける風は、秋の香りを失いつつある。 茶色く色褪せた枯れ葉が、力無く宙を漂う景色を見る機会も、ここ数日ですっかりなくなってきた。 不意に、冷たい突風が身を叩く。 「寒ッ……」 オレ──神崎 鋼介は小さく呟きながら、マフラーを持ってこなかったことを後悔した。 学園祭が無事に(?)終わり、中間試験も終わった今日この頃。差し迫ったイベントは、クラスマッチの決勝戦のみだ。 今日もオレは、期末試験に向けた勉強と、右京氏のストレス解消みたいな特訓を受けに、学園へ向かっている。 「……はぁ」 『光陰矢の如し』か……。まったくもって、時の流れとは早いモンである。 オレの現在の心境を混ぜて良いなら、前述した言い回しを、『光陰音の如し』に言い換えたいくらいだがね。 何とか冬を迎えようとしているということに、ある種の感慨すら感じていると、 「鋼介!」 デカイ声で呼びかけられると同時に、少々乱暴なくらいの力で、肩を叩かれた。 途端に、オレは思わず右目をこする。 「? どした?」 呼びかけてきた張本人である慎士が、怪訝そうに聞いてきた。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!