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吹き抜ける風は、秋の香りを失いつつある。
茶色く色褪せた枯れ葉が、力無く宙を漂う景色を見る機会も、ここ数日ですっかりなくなってきた。
不意に、冷たい突風が身を叩く。
「寒ッ……」
オレ──神崎 鋼介は小さく呟きながら、マフラーを持ってこなかったことを後悔した。
学園祭が無事に(?)終わり、中間試験も終わった今日この頃。差し迫ったイベントは、クラスマッチの決勝戦のみだ。
今日もオレは、期末試験に向けた勉強と、右京氏のストレス解消みたいな特訓を受けに、学園へ向かっている。
「……はぁ」
『光陰矢の如し』か……。まったくもって、時の流れとは早いモンである。
オレの現在の心境を混ぜて良いなら、前述した言い回しを、『光陰音の如し』に言い換えたいくらいだがね。
何とか冬を迎えようとしているということに、ある種の感慨すら感じていると、
「鋼介!」
デカイ声で呼びかけられると同時に、少々乱暴なくらいの力で、肩を叩かれた。
途端に、オレは思わず右目をこする。
「? どした?」
呼びかけてきた張本人である慎士が、怪訝そうに聞いてきた。
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