78139人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
街の北端────
桜峰市の北には、粗大ゴミなどが大量に投棄された、広大な土地がある。
ゴミの山が、そこかしこに築かれている中、
「オォーッホッホッホ!」
響くのは、女性の高笑い。
「出てらっしゃい! まだまだ愛で足りないわぁ!」
オペラ歌手のような、よく響く声の後。
ゴミ山の頂上に寝ていた冷蔵庫が、真っ二つに斬り裂かれ、斜面を滑り落ちた。
その様子を、
「……」
隣の山の陰から見る少女──桜田 千夏は、近寄ってくる足音に、身を強張らせた。
純白の大鎌<クレセント・ヴァンパイア>の柄を握る右手は、あちこちに浅い切り傷が走っている。
右手だけではない。セーラー服を纏う体も、大量に傷を負っていた。
どれもさほど深くはないが、セーラー服は所々赤く染まっている。
(あまり長引いちゃうとマズイな……)
桜田は考えを巡らせつつ、中腰で立ち上がって、大鎌を構える。
流れ出た血液を吸わせた鎌は、しかし、まだ全力を出せない。
吸った血の量に応じて、攻撃能力を強化・多様化できる鎌だが、自分の血液では、起動効率が悪すぎるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!