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「ありがとう」 そう言い残し、先生は部屋を立ち去った。 母と二人きりになった。 正直、僕からはかける言葉が無かった。 沈黙が続いた後、母が口を開いた。 「帰ったら何食べたい?何か欲しいものはない?」 入院するとみんな優しく接してくれる。 心地よかった。 「焼肉食べたい。」 「わかった」 母は満面の笑みで言った。 それからまた暫く沈黙が続いた。 気付いたら外は、暗くなり始めていた。 「じゃあお母さんまた明日も来るからね。ご飯ちゃんと食べるんだよ。」 「うん」 質素な返事をした。 母が帰ってすぐ夜食が看護師の手によって運ばれてきた。 この時やっと腰とベッドを繋いでいた拘束具から解放された。寝返りがうてなかったので腰が痛かった。 夜食はと言うと、御世辞にも美味しいとは言えないものだった。 食事が下げられ、また腰を拘束具に繋がれた。 一人ぼっちになった。 静寂の中窓から注ぐ風が気持ち良かった。
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