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「それ幽霊だろ。もしくは幽鬼?みたいな?」
男の危うげな雰囲気から常識云々に思考を展開させていた上條は下がっていた目線を上げた。真顔がこちらを見ている。
「今日あたり訪ねてみて別の人が住んでたりしたら笑えるよなー」
俺は全然笑えない。
「例えばだ。男が住んでいる筈の部屋から女性が出たとしよう。そしてこう聞く。男の人と同棲してるんですか、とかなんとか。……そして女は応えるんだ」
碓氷はわざとらしく声を潜め、ぐっと顔を近付けてきた。
「“私、一人暮らしですけど”」
間。
「ギャァァアアアァア!!!!!!!」
大体そんな所だろうと容易に想像出来た。
自分の言った事でそんな大袈裟な悲鳴上げなくても……。
「やべえ笑えるっ!!」
何が面白いのか理解不能だが目の前の阿呆面はひーひー笑い出した。
「男が女の恋人で遊びに来ててたまたま女が所用で外出中に俺が挨拶に行ったって感じかな」
「うわ、ノリわりぃ。分かんねーぞ。そのうちラップ音とか聞こえてきたりしてな。そうなったらおもしれえのに。って」
明らかに楽しんでいる碓氷の頭を小突くと嘆息した。まったく。他人事だと思って。
気が済んだのか、碓氷は笑うのを止めた。
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