新住居

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「生き霊って可能性もある。そもそもほとんどの霊が生き霊らしいぞ」 「幽霊ってはっきり喋るの?」 うーん喋るか。でもはっきりと?ん?あの人はっきりと喋ってたっけ? 短すぎる会話の内容は覚えていても会話する気が感じられない声がどんなものだったかはもう忘れてしまっていた。 人が喋ろうとしているにも関わらず平気で閉め出すような男だ。話すのが面倒だったに違いなかった。相当眠そうだったし。 「知らねぇけど、それだとあまり喋らなかったのも頷けるってわけだ。――なあ、さっきザッと見た所でお前好みの女子は居たか?」 「……入学早々そんな目で女子見ないよ……」 普段と変わらない調子でいつの間にやら進んでいた幽霊説は碓氷の話題転換によって終えられた。 その後は碓氷が付き合っていた男と別れた事(別れた直後はどん底まで落ち込むが立ち直りは早い)や、早く一年入ってこい(俺達が入学したばかりだというのに)とか、ナンパに付き合え(ターゲットは男だから俺は無理だ。女相手でもできないけど……)とか、主に碓氷による碓氷の話になっていった。 碓氷がゲイである事は知っているので別段いつもと変わらない相槌を打つ。 それにしても。 堂々とくっちゃべっていて周囲のクラスメイト達に聞こえているはずだがいいのかな………? 春休みは特にこれといった事はしなかったなとぼんやり思いながら、上條は一つ欠伸をした。 .
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