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◇
関わらないに越したことはない、と思った側からこれか。
いつかの碓氷の言動が当たってしまうなんて思っていなかった……ある意味において。ただし、ラップ音ではなかったのだが。
夜も深まり床についてうとうとしていたちょうどその頃。
隣から、音が聴こえたのだ。
それは何気ない物音に聞こえたが妙に耳に残った。気にもとめずに再び寝に入ろうとした時、また音がする。
音というより……聴いたのは女性の声?
音のした方向は201号室、あの男の住む部屋からだ。
(じょ、女性??)
なんで女性の声が……途端に頭の中によぎるのは冗談のような碓氷の幽霊話。
いや。
……あんな話をしてしまったから変な先入観と心身の疲労のせいでそういう考えに至ってしまうのかもしれない。なまじ当人がユーレイっぽいだけに。
普通に考えてテレビやラジオなどの音だろう。
上條は目を閉じたまま思い直して今度こそ眠る事に集中した。
だが、それで終わらなかった。
違う。女性の声だと思っていたものは少女の声と言った方が語弊がないかもしれない。
あれからもしばしば聴こえる声は心なしかボリュームが大きくなっていてそれがアニメ系な女の子の歌声だと認識できるまでになった。
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