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寝間着のまま適当にサンダルを突っかけて玄関を出る。
断片的に続いている騒音はまだ耳に痛い。
201号室のインターホンを押す。出ない。もう一度押す。三、四回連打する。……反応なし。
……ここの住人は余程の無神経か、余程の度胸があるらしい。
もし自分が碓氷だったら流血沙汰になっている(流石に大袈裟?)。親友は短気なのだ。
ふとアニメ声が止んで、「ん?」とドアに耳をくっつけてみた時。
ドサッと何かが倒れるかのような音がドア越しから聴こえてそれらの雑念は吹き飛んだ。
――今のはなんだ。
何が倒れたのだ?
急に空気が尖って張り詰めた気がする。
嫌な予感がして衝動的にドアを叩いた。
それでもやはり反応はない。言いようのない胸騒ぎがする。脳裏に一つの可能性が駆け巡る。
思わずドアノブに手をかけると、なんと開いてしまったではないか。鍵はかかっていなかった。
一瞬疑問符が浮かんだがそれどころではなかった。
部屋の中は真っ暗で玄関からは状況が窺えない。
広くない部屋の奥に唯一小さな灯りが洩れているのが確認できる。
不法侵入。
そんな単語が浮かんだが、上條は数秒間逡巡した後、半ばやけくそに部屋に踏み入れた。
自分の行動に頭の端で驚きを覚えながらも、おそるおそる灯りのある方へ進む。
机の電灯に照らされた床。
限られた明るみに映し出されて目にする光景は――
鼓動が大きく高鳴った。
首筋にヒヤッと冷たいものを感じた。
上條が進んだ先で、男がうつ伏せで倒れていた。
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