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「ひっ…!」
辛うじて喉の奥からか細い声が出るだけで……まるで地面に足を縫い付けられたようにその場から一歩たりとも動けなくなる。淡い光以外は何もないから周りはすべて黒で塗り潰されていて地面すらない気もして、その恐怖も同時に襲ってくる。
「…………………」
男は俯けていた顔をゆっくりと上げる。
ボソボソと何か喋っている。
俺は男の抑揚のない声が耳に入らなかった。
息ができない。
苦しい。
空気を吸い込めない。
心臓は、飛び出さんばかりにドクドクしている。
見て、しまったからだ。
目も耳も鼻も口も―――顔のパーツが一切ないのだ。
「うわああっ!!!」
上條は悲鳴を上げて飛び起きた。
布団をギュッと握り締める。
ここは暗闇ではなかった。
「…………ゆ、ゆめ………」
上條はそうと分かると深く深く溜め息をついた。
ユーレイの話なんかしたから………のっぺらぼうだった辺り寧ろ妖怪っぽかったが。
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