ユーレイとマドレーヌ

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「あれ……」 上條は眼下の見慣れない掛け布団に首を傾げた。そして昨夜自分が退けた漫画や衣類、ゴミその他諸々がそのままであることに気付く。 …そうか。昨日は帰らずいつの間にか眠ってしまったのか。 まだ半分寝ている頭でぼーっとゴミの密集地帯を発見し、何気なく見ているとその中に見覚えのある紙袋があった。 「あ、……え?」 思わず二度見する。あれは上條が挨拶に行った際に渡したマドレーヌの入っていた紙袋だ。 ちゃんと食べてくれたんだ……。 中身が空なのでそういうことだろう。 って、2ヶ月も前のやつ…!……お菓子だからある程度はもつか…いつ食べたのか知らないけど。 あのマドレーヌはその時たまたま材料が揃っていて上條が作ったものだ。 あげた頃に、それとも最近食べたのかは知らないがそれはどうでもいい。それよりもこのゴミやらなんやらの散乱ぷり……足の踏み場がないわけではないが、油断してうろうろしていると躓き(つまずき)そうだ。 (わっ、マジで汚いっ!!なんなんだこの散らかり様は!!) 昨夜は暗闇でよく見えなかったが窓から陽光が差し込む今朝ではその有り様がよく見てとれる。おかげで頭がはっきりしてきた。 「どっ、どうかしましたか?」 「はいぃっ!?」 完全に目が覚めて惨状に愕然としていると急にきょどった声がしてドキリとした。こっちまで変に裏返った声になる。すぐ横に何故かオドオドしている男が立っていた。 悲鳴を聞いて隣室から現れたらしい。全く気配がしなかったので驚いた。陰気な外見も手伝って余計に心臓に悪い。
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