33人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
夜明けの一番鳥が鳴いて、サアヤは目を覚ました。
部屋の外は既に騒がしく、あちこちから喧騒が聞こえてくる。
「サアヤちゃん、起きてる?」
「あ、はい!」
ノックとともに聞こえてきたアリノアの声には、昨日あれだけ騒いでいたのに疲れの色は一切無い。
サアヤは軽く身なりを整えると、アリノアが入ってくるのを待った。
「おはよう、サアヤちゃん。朝ごはん持って来たわよ」
「おはようございます、アリノアさん。ありがとう」
持ってきてくれた朝食は、昨日初めて食べた薄茶色のスープと焼かれた魚、真っ白な穀物。
「おいしそう…、いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
見た事の無い食材に、食べた事の無い味。なのに不思議と懐かしい。
「ねぇ、アリノアさん。みんなもう起きてるの?」
「ええ。朝ごはんが終わったら、上陸するわよ」
「え?」
窓の外を見れば、そこは昨日見えていた海ではなく鬱蒼とした森。
いつの間に船を動かしたのか、サアヤにはさっぱり覚えが無い。
最初のコメントを投稿しよう!