33人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
きっととても心配している。
そう思うと、サアヤは急に泣きたくなった。
生まれて初めて、しかも黙って居なくなった。
優しい大好きな父が、必死になって自分を探している。
無事でいるものの、自分はまだ戻れない。
リンダを置いてきてしまったから。
涙が込み上げる。
心配させてしまう。
優しい人達を。
「...サアヤ」
「...ごめん、大丈夫...大丈夫、だいじょうぶ...」
カダールも、アリノアも、心配そうな顔をしている。
泣いてはいけないと、思えば思うほど涙が込み上げる。
「...サアヤちゃん、大丈夫よ。ね?」
「...どうしよう...どうしたら良いんだろう...帰りたい...けど、リンダ...」
俯き、溢れそうな涙を二人に見られないように隠した。
帰りたいけれど、リンダを助けなくては帰れない。
帰れないけれど、父親が恋しい。
とうとう溢れてしまった涙を、何度も何度も拭う。
「サアヤちゃん、泣かないで。大丈夫よ、きっとすぐ帰してあげるから、ね?」
「...サアヤ...」
二人が声をかけてくれるのに顔を上げられず、その上余計に涙が出てきてどうにもならない。
昨日もたくさん泣いたのに。
そう思うサアヤの耳に、明るい声が響いた。
「何辛気臭い顔をしてんだ、お前ら」
最初のコメントを投稿しよう!