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「フェイトさ...」
涙で滲む視界に、大きな手が映る。
「泣くな」
大きな手に、俯いていた顔を上げられる。
「帰りたいなら、送ってやる」
「え...?」
「リンダの事なら心配すんな。ちゃんと見つけて帰してやるさ」
そんな事を言われるとは思っておらず、間近に見えるフェイトの顔を見つめる。
「どうする?」
「どうするって...」
「帰るか?それとも、リンダを助けに行くか?」
リンダ。
「...やだ」
「ん?」
「帰りま、せん。リンダを、助けなくちゃ...だって」
きっとリンダの方が、もっと寂しくて怖い思いをしている。
フェイトの言葉で気が付いた。
自分はいつでも帰る事が出来る。
けれどリンダは、きっと化け物に捕まって帰れない。
「リンダと一緒じゃなきゃ、帰りません」
言い切って、フェイトを見つめた。
いつの間にか涙は止まって、視界がクリアになっている。
だから見えた。
フェイトの微笑む顔が。
「よーし、良く言った!お前ら聞いたな!サアヤが覚悟を決めたんだ、お前らも気合い入れてけよ!」
「「「うおぉっ!!」」」
フェイトが振り返り、作業を止めて成り行きを見守っていた海賊達に声をかけた。
何故か涙ぐんでいる者もいる。
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