第二章

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 「会長、おはようございます」  「部長、おはようございます」  「委員長、おはようございます」  「朝美さん、おはようございます」    朝美は高校が好きだった。  国内でも有数の金持ちか、国内でも有数の脳の持ち主しか入ることの出来ない、理想と利権の塊のような私立の高校だったが、意外にも朝美は、高校を自分の軸として捉えていた。  入学当初から二年生の夏まで、朝美は様々な部活に顔を出した。  野球部から科学部まで、部活という部活全てに参加した。  幼い頃よりの、親族からの迫害が、朝美の内面を鍛えたのだろう。幼い頃よりの、親族からの虐待が、朝美の外面を鍛えたのだろう。  天才的だった。朝美はどの部でも、天才的に活躍した。  実力があるのに、部長になりたいと自分から言ったことはなかったし、公式の試合に出てみないかと誘われても、表舞台は周りに譲ると言って断った。その結果、人徳だけが集まった。朝美は、顧問の先生に対しても、とにかく親しくした。そして、盗める全ての技術を盗んでいた。  朝美は三年生になると、生徒会長に立候補した。  当然、前年度の会長とコンタクトを取り、根回しは済んでいた。眉目秀麗、成績優秀、文武両道の朝美を誰もが信用した。全校生徒が参加必須の役員選挙は、ただの茶番だった。  朝美は高校が大好きだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!