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幼稚園のころ、仲良しの女の子がいた。
お隣りの家に住んでいて、名前を『かおりちゃん』といった。
僕よりひとつだけ年上で、いつもお姉ちゃん風をふかせていた。
一人っ子だったかおりちゃんは、僕のことをまるで弟のようにかわいがってくれた。
僕が幼稚園でいじめられていると、いつもいじめっ子に仕返しをして、泣いている僕のことをなぐさめたりしてくれた。
僕は、そんなかおりちゃんのことが大好きだった。
友達なんていらない、ずっとかおりちゃんがそばにいてくれればいいと、そんなことを考えていた。
ところが、僕が5歳のとき、かおりちゃんは交通事故で死んでしまったのだった。
僕は悲しかった。
かおりちゃんが死んでしまったなんて、信じたくなかった。
だから、僕は信じないことにした。
かおりちゃんは死んでなんかいない。ずっと僕のそばにいてくれる。
僕のお母さんが、かおりちゃんのお葬式に僕を連れて行こうとしたけれど、僕は絶対に行きたくないと言って泣き叫んだ。
だって、かおりちゃんは死んでなんかいないのだから。
かおりちゃんは生きている。
僕は、僕の心の中でかおりちゃんを生かし続けることにした。
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