第一話 「原因と結果」

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  「……オリビア…?…っおい!オリビア!!!?」 一目見ただけでわかるほどの惨状。真っ赤に染まった美しい細工の施された床。特別に水を弾くよう加工されていた床は、少し濁り始めた赤を弾く。 ――幾つもの塊が、そこに転がっていた。元が何だかわからないような、醜い肉片。 口元をその痩せ細った手で覆いながら、少しくすんだ金色の髪の男性は部屋を見回した。 鉄臭さが充満している中、男性は焦ったようにふらふらと視線をさ迷わせる。 彼女は、此処にいた筈なんだ。彼女は、……彼女の、いるべき場所、は…。 「……ッ」 ハッと思い浮かんだ場所は此処からは丁度見えない位置にあった。足に固まりきっていない血が跳ねるのも気にせず、男性は奥に突き進んでいく。 『えぇっ!部屋に入って直ぐの所でこの子を産むの!?』 『嫌よ?…なんでって……恥ずかしいじゃない!』 『だいたい!こんなとこじゃお医者様も満足に診察できないじゃない!…ねぇ?』 近くにいた医者に首を傾げながら聞く彼女に、周りの人間が苦笑するしかなかったあの時。 結局折れたのは自分で、彼女が言うように部屋に入って直ぐは見えないようにして―― 疲れきった顔に小さく笑みを浮かべて、男性は顔を上げた。 視界に入ったベッドには、 腹が開かれ事切れた彼女と、小さな命。 小さな、命。 「ぅ…あ……あぁあああああ!!!!」 何故皆が息絶えて、何故彼女が冷たくて、何故赤子にきちんと処置がしてあったのか、など、男性の頭には少しも浮かばなかった。 ただ、大切な大切な妻を失った悲しみに、泣き叫ぶ他、なかった。   『アークシェル伯爵本邸が何者かに襲撃されるという事件が、第一の月末日に起こりました。 邸内にはアークシェル夫人、従者数十名に加え、ブレンチス伯爵の遺体が発見されています。犯人の痕跡は全くといっていいほど見付からず、捜査は難航しているのが現状のようです。 一説にはアークシェル伯爵の策略とも――』 それが、不可解な事件の幕切れだった。  
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