第二話 「偶然と必然」

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  固い地面に薄くはった水を、小さな足が踏み荒らす。ぱしゃりぱしゃりと跳び跳ねて生まれた音が、未だ振り続ける雨音に掻き消された。 「どうしよう…っ、もうこんなに暗くなっちゃった……!!」 緑色のツルツルとした素材の服を纏った小さな身体は幼子特有の高い声を発す。 焦りに満ちた幼子は、整わない呼吸を幾度となく吐き出し走っている。薄暗く照らされた通りを辛うじて視認できているようではあったが、幼子の足は段々と人気のない方向へと向かっていた。 高い位置から見下ろすのっぺりとした月が、唯一の灯りである田舎道。 ようやく見えてきた、とほっとする幼子の視線の先に、小さな光を発する一軒の家がある。 少し走るスピードを落とした幼子を待つように明かりの灯された家では、一人の女性が外を窺うように見ていた。 「……レオ…」 既に冷めてしまったスープが食卓に並んでいる。ちらちらと時計と窓と食事とを交互に見つめ、女性は小さく呟いた。  無事と笑顔を手に帰る、大切な我が子を待って。  
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