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「……ッカー!ぁンだよこの論文はァ!!中途半端なところで終わるな!俺が知りてぇのはこっからだ!!」
ガサガサと手に持つ紙の束を捲り、繰り返し内容を見るが幾ら睨み付けようと内容は変わらない。
それは事実なのであるが、それを読んでいる本人も十二分に理解しているのだが。理解するのと納得するのとでは幾分も意味が違ってくる。――まあ騒いだところで何も起こらないのだから、読んでいる少年もただ八つ当たりをしているだけ、といったところだろう。
彼の持つ紙には、『古代文明と現代文明の相違』と太い文字で書かれており、その下には著者の名前だろうか、ロード=グレイソンと小さくあった。
ロード=グレイソン。彼は数十年前、突然の病にこの世を去った、名の有る学者である。
彼はあまり世間からの風当たりはいいとは言えなかったが、一部には熱狂的なまでのファンもいたそうだ。それ故に、彼の論文は世間に押し潰されることなく、今日までこの世界に存在し続けている。
とは言っても、風当たりがよくなかったのは事実。
今更彼の論文を手に入れるには、それ相応の努力を要する。
(……なんなんだよ、っくそ)
故に、その努力の結果が実り無いものならば少年の悪態も頷ける。
「どうして、」
ぼそりと呟かれた少年の声は、周りの蔵書に吸収され潰えた。
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