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「――…そうか」
ラルクの言葉を聞いた赤髪の男性は小さく頷き、情けなく眉を下げた。
「これは、おまえが決めるべき問題だからな」
俺は、おまえが望むように取り計らうよ。
視線をやや下にずらして、男性は言う。消え入りそうなその声に、ラルクはすまないと繰り返すだけだった。
その時だった。
部屋中を――否、屋敷中をけたたましいサイレンが走り抜ける。と、共に聞こえた甲高い悲鳴が、しかと男性の耳に届いた。
「ラルクッ…!!」
声に若干の焦りを滲ませながら声を掛ける男性に、ラルクはただ呆然と呟いた。
“……レイスが、…レイスは、確か今日”
その先の言葉を想像できたのか、男性はさっと顔色を青くし、呻く。
くそったれ、と。
同時に腰に携帯していた剣に手を掛け、男性は部屋を出た。ラルクは使えそうもないのを振り返り確認し、男性は小さく名を呼ぶ。
「来い、ペインター」
と、瞬間男性の横に光が結集し、ゴトリと何かが動く音が聞こえた。一瞬、廊下を眩い光が照らし、男性が目を開けた先には奇妙な形をした桃色の物体が現れる。
物体は大小様々な球体を幾つかくっ付けたような形で、微かな光を纏っていた。
『なーにぃー?御主人が自分を喚び出すなんて、』
「御託はいい。確かお前は、俺より弱い力のモノなら知識さえありゃあ変質できたな?」
顔の見当たらない桃色の物体から、反響したような声が発されるが、男性は鼻で笑い一掃。直ぐ様尋ねた。
何やらただならぬ雰囲気を感じ取ったか、桃色の物体はそうです、と声を硬くし答える。男性は頷き、ならば――と物体に伝えた。
『御主人。確かにそれなら自分でも為れる。でもそれは、』
「気にするな」
『…了解しました』
男性と物体の会話は言葉の裏に秘められた内容が多々あったが、彼らを知る者ならば咄嗟にこう叫ぶだろう。
過ぎる力を扱うのは、幾らおまえでも、と。
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