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あまり代わり映えのない廊下を、歯を食い縛りながら走る。今、彼の胸中を占めるのは膨らみ上がった不安や怖れであろう。
「はっ、…っ、…、くそっ」
短い手足を必死に振り上げ、ともすれば襲い来る疲労から倒れてしまいそうになりながら、少年は走っていた。
と、華美な装飾の扉や天井に思考を一時中断させて、少年は急に立ち止まった。少年自身、何故立ち止まったのか理解できていないようで、小さく首を傾げながら後ろを振り返る。
瞬間、彼は再び走り出した。
「……ッ、なん、でっ…!?」
振り返り、元から目指していた方向へ一心不乱に足を出す。漏れた言葉は甲高く、悲鳴のようであった。
有り得ない
有り得ない
そんなこと、有るわけ
『…さァて。よォーやく、見つケたヨ?』
声が、聞こえたの、は。
ギギギ、と音が鳴りそうな程鈍く、少年の首は横へ向く。途端、声にならない悲鳴が喉の奥から発せられた。
必死で固まりそうな足の回転するスピードを上げ、アレから逃げようと駆ける。視界が歪み、嫌な汗がドッと背中から流れ落ちた。
「ッーー!!」
アレに捕まればお仕舞いだと、心の片隅が警鐘を鳴らす。
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