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まだ、空が蒼い下校時間。俺と馬鹿三人衆は、寄り道で商店街を歩いていた。
正直、面倒くさい。
まぁでも、別にコイツらのことは嫌いではないし、たま~にのことだから、付き合ってやるのも悪くない。なんだかんだで、コイツらと一緒だと楽しいし。
「でさ! この前に来た客がさー!」
俺の、隣の隣を歩く三枝木が、バイト場に来た客の話をしている。
俺は、その会話を半ば半分聞き流しながら、商店街を歩く様々な対向人を、人間観察がてら眺めていた。……胸を揺らしながら歩いている、お姉さんとか特に。
「――!?」
刹那。
突然、視界が、変になった。俺は、思わず目を見開いてしまう。
一瞬。ほんの一瞬だけ。
視界が、全て真っ白になった。
前を歩く人間。
前から来る人間。
軒並みの店。
店の看板。
地面、空。
その全てが一瞬だけ、真っ白な色になったのだ。
聞けば、信じられない話である。
しかし、俺は体験した。
馬鹿三人衆は話で盛り上がっていて、気付かなかったのだろうか。今も、会話に夢中なようだ。
(なんだ……?)
俺は立ち止まり、辺りを見渡す。
そして、何かを感じる。前方から、何かを感じる。
そして、俺の目に留まったのは。
長い黒髪で。
白い肌で。
吸い込まれそうな、深蒼の瞳で。
綺麗な少女だった。
そして、俺はこう、思った。
どこかで……。
見たことが、ある。と。
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