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【01】
散った桜の木を、より儚げに演出する夕陽。川の水面にオレンジの光が煌めき、俺の目を細める。
現在は寄り道、の現在進行形で下校帰宅中。一人、川に沿って帰路についていた。ちなみにさっきまで、何かに謀られているかのように、はるひと一瞬だった。
俺は馬鹿三人衆と、帰りにゲーセンに寄っていたのだが、その馬鹿三人衆と別れてからの帰宅中、偶然偶々、本屋から出てきたはるひと、ばったりと遭遇した。そして、はるひと別れて、現在に至るのだ。後ろを向くと、橋を渡るはるひが見える。
運命って何だろう……。と、真剣に考えてしまう。
勇者が魔王を倒すのが運命。
その逆もまた然り。
なら、俺が登下校時にはるひと出逢うのは、本気で運命なのか……など、馬鹿なことを考えてしまう。
「ハッ」
そしてそんな馬鹿な妄想を、鼻笑い混じりに吹き飛ばした。
俺は運命なんて信じない。
偶然という名の必然なんて、在るわけない。
所詮は、偶々。
ただ、人間は『偶々』や『偶然』を『運命』や『必然』と、綺麗な方向へ脳内変換しているに過ぎない。所詮は戯れ言、綺麗言なのだ。
「……………………」
それに俺は、運命など信じてはいけない。もし、運命と信じてしまったら……。もし、こうなることが運命だと、信じてしまったら……。あの日のあの衝動は……。
あの、死にかけた日の、あの、犯した過ちは……。
運命になってしまう。
それだけは……絶対に駄目だ。
と、言うより、嫌だった。
*
「ただいま」
俺は、自宅の泡沫宅の鍵を開け、扉を開けて言った。
「瀲兄! おかえりなさい♪」
すると奥から、俺とは違う高校の制服を来た、俺と瓜二つの少女がドタバタと、笑顔で迎えてきた。そして、ホームベースに飛び込む三塁ランナーよろしく突っ込んできた。
「瀲兄ぃぃぃぃ♪♪♪」
制服にエプロンという、何とも可笑しな格好のこの少女……もとい俺の妹。
レイナ
泡沫澪奈。
俺とは違う高校に通う、俺と瓜二つの同い年、高校二年生。
今の紹介で解る通り、俺、瀲那と澪奈は双子である。しかし、瓜二つなのは見た目だけであって、性格は全然違う。俺は、どちらかと言うと冷静沈着なクール(でありたい)。で、澪奈は……。
「おかえり瀲兄! 瀲兄瀲兄瀲兄♪」
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