『夢』既視『現』

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さすがに受け止めなければ、澪奈は大怪我を負ってしまいかねないので、仕方無く受け止めたが、当人である澪奈は、そんな俺の気遣いなぞ露知らず、俺の胸に頬を擦り合わせていた。 相変わらずの、茶髪ポニーテール。しかし、普通のポニテと違い、澪奈はそのポニテを左肩から前に出して、片っ方だけのお下げみたいにしているのだ。長さは胸の下辺りまで。 まぁ、この通り『ブラコン』である。勿論、ブラコンとは、ブラザー・コンプレックスの略。 ……そう言えば以前、日根が、ブラコンはブラジャー・コンプレックスの略だろ!? と真顔で言っていたのを思い出した。あのときは流石に引いた。 ちなみに余談だが、幼い男の子を好きな場合のショタコンとは、ショウタロウ・コンプレックスの略だそうだ。ショウタロウとは、鉄人なんちゃら号の主人公のことらしい。……最近知ったので言いたかっただけだ。 それは兎も角。 「淋しかったよぉ瀲兄! 澪奈ずっと待ってたんだよ!」 「あー、解った解った悪かった。とにかく離れろ」 俺は澪奈を押し退け、靴を脱いで、自室のある二階へ続く階段を上がった。その途中で。 「瀲兄ぃ! 今お風呂沸かしてるから、沸いたら一緒に入ろうね♪」 「誰が入るかぁ!!」 八重歯を見せて笑顔の澪奈。 俺は逃げ出した。 あれはもうブラコンとか、そんなレべルじゃない。自分で言うのも何だが、本気でマジでガチでリアルに俺に惚れているらしい。 家族で双子の兄、としてではなく、この世でたった一人の男性、として。性的対象として。 俺との子供を産みたいとか、ほざいてたし。 かなりヤヴァいレヴェルだ。 無論、俺にはそんな感情は一切無い。アイツ、澪奈はどこまでいっても、ただの妹なのだ。 でも俺は……。 以前、アイツを……。 家族であり……。 妹である澪奈を……。 「……………………」 死にかけた日……。 あの日から、あの過ちの日から、澪奈はより一層、俺に対しての想いを熱くした。熱くさせてしまった。 どうしてだ……。 全く、我ながら理解出来ない。 俺は自室の電気を点けないままベッドへ寝転び、仰向けになって、天井に手を伸ばした。 「…………クソッ」 そして俺は、寝返りをうって、そのまま急な睡魔に襲われ、寝てしまった。
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