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【02】
かづき はかな。
夏月 葉奏。
黒い長髪の少女の名前。
名前だけは、初耳だった。
いや、普通は姿形でさえも、初見であるはずなのだ。
そして何だ、この状況。
男子高生が、三人の女子高生と一緒に、食卓に並んでいる。一人は妹だが。
状況的には美味しい。
昼食のカレーも美味しい。
目と舌で二度と美味しい。
しかし、解せぬ。
勿論、夏月のことである。
とりあえず、どういうステータスなのかは知った。
「夏月さんは、ウチの学校の転入生なんだよ。来週の月曜日から、だけどね。それで――」
と、はるひが言っていた。
簡潔に詳細を説明すると、はるひがここへ向かってる途中に遭遇、はるひは道を訊かれ、その目的地へ同行することに。そして道中の会話に花が咲き、我が校の転校生だと知り、更に開花。はるひと、それなりに近所ということで友達になり、現在に至る。と、いうことだそうだ。
それは兎に角。
「夏月さんって、どんな理由でこっちに来たの? やっぱり親の転勤とか?」
「いいえ。ただの引っ越し」
「そうなんだー。以前はどこに住んでたの?」
「ここより結構遠い所の田舎、かしら」
「田舎って、ここも結構田舎じゃない?」
「そんなことないわ。色々な店とかあるし、私的には都会な方よ」
「他の人から見たら、そうなのかな?」
あー! カレー美味しいな!
はるひと夏月が会話を楽しんでいる中、俺は空気という役柄を熱演中。澪奈は会話に入ろうとせず、スプーンをくわえて俺を見ている。
我が家の昼食といえば、俺と澪奈での二人きりの昼食が基本。そして澪奈は俺の隣に座り、やたらと一方的にイチャイチャしながらが基本なのだが、今回は違う。
俺の隣には、はるひが座り、その正面には夏月、そしてその隣に澪奈。なので澪奈は俺の正面。
真っ向から、甘えたいオーラが犇々と感じるのだ。
これは……後が怖いな。
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