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「――ッ!?」
目が覚めた。
目覚めたと共に、見慣れない光景に目を疑った。
誰かの部屋。部屋には、小さな本棚に、簡易な作りの勉強机。真っ白なベッドに、大きな古時計。床はフローリングで、部屋の壁は真っ白。窓の外は、夜なのだろうか、空には星の様なものが見える。
そして俺は、真っ白なベッドに寝ていた。
いつの間に眠っていたのだ。
何故、眠っていたのだ。
さっきまで俺は……。
「!!」
思い出し、俺は自分の顔に触れた。そういえば俺は、思い切り金属バットで顔面を殴打されたのだった。
「!?」
しかし、俺の顔面には傷はおろか、痛みさえ、無かった。鼻も折れていない。顔面が陥没していても、おかしくはないほどの勢いだったのに、だ。
死んでいても、おかしくはないのに、だ。
………………また、か。
 ̄ ̄
「あら。おはよう、泡沫君」
ベランダの方から聞こえた、聞き覚えのある声。
夏月 葉奏だった。
夏月は部屋へ入り、ベッドへ座った。
俺はただ、夏月を見ていた。と、言うより、頭がぐちゃぐちゃで何も考えられなかった。
「どうしたの?」
「あ、いや……いや」
「あいやいや? 呪文か何かかしら」
クスッと笑う夏月。
上手く言葉を喋れない。
何を言うべきなのか解らない。
すると、夏月は立ち上がり、簡易な造りの椅子へ歩きながら、言う。
「夜のお散歩がてら、来た道を辿っていたら、泡沫君、公園のど真ん中で寝ていたんだもの。吃驚したわ」
そして椅子に座った。
「寝ていた……?」
「そうよ。ぐっすり、寝ていたわ。いや、ぐったり、かしら」
細くした深蒼の瞳が、俺を見る。
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