『夢』既視『現』

22/31
前へ
/167ページ
次へ
「……お前、夢の内容知ってるのか?」 「ええ。知っていると言うより……」 ところで、真剣っぽい話の途中だが、夏月さん。シングルベッドに二人はキツイっすよ。さっきから夏月さんの胸に、俺の手の指が下敷きにされていて、ナンヤカンヤがテンヤワンヤです。 それは兎に角。 「私が、君に見せた、のよ」 「え~…あ~……」 考え中。考え中。 えっと何だって? つまりは、俺が見ていた夢は、夏月が作って、俺に見せていた、という事なのか。 なるほど。 「納得出来るかッ!」 とは、言ったものの。 夏月は夢の内容を知っている。全て否定出来ないのも現状。 「……マジなのか?」 「マジなのよ。泡沫君」 漸く夏月は起き上がり、解放された俺の指。あの感触と温もりが、ちょっと惜しいと思ったのは秘密。 「だから、夢で話していた事は、全て現実、事実なの。で、君にも、こういう現実離れした能力が有るのよ」 どうやら、夢の続きの話をしているようだ。 とりあえず、俺は会話を合わせる事にした。 にわかには信じがたいが、実際に夢を見せられたことだし。 「……なら俺の能力は、不死ってことか?」 「残念ながら、君の能力は不死ではないわ」 予想が外れ、なんか恥ずかしい。 「この能力はね、前世に関係があるらしいの」 「前世?」 真夜中三時過ぎ。 ベッドの上で、若い男女が肩を寄せ合い。 前世について話している。 「泡沫君は、自分の前世は何か解る?」 「いや、んな事言われても……」 「前世が、人や動物、昆虫だとは限らないのよ」 「と、言うと?」 「例を上げるのなら、私の前世は夢魔」 夢魔。サキュバス。 架空上の世界に存在する、美しき女性の姿をした、悪魔。 だから、さっきの夢はあんな内容に……。 と、いうことは。 「お前……俺に正体を見せるとか何とか言っておいて、ちゃっかり餌にしたのか」 「あら、夢魔について詳しいのね。思春期故に、かしら? まぁ、ごめんなさい。私も実際に、こうやって夢を見せるのが初めてだったの。だからコントロール出来なくて……。でも安心して、泡沫君。夢で話していた事は事実だけど、他のは所詮、夢だから」 そうなのか。 まぁ、そうだろうな。 うん、そうだろうな。 じゃないとコイツ、俺の子供産んじゃうもんな。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加