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はは、短い人生だった…。
俺が汗だくで泣いていると、
「心配しなくても、大丈夫よ」
と言った。そして言葉を続ける。
「泡沫さんなら、君が家を出て直ぐ、眠ったはずだから」
「え?」
「私は、夢魔なのよ? 私の夢を見せるのは、それなりに難しいけど、ただ眠らせるだけなら、造作もないわ」
そう言って笑う夏月。
その笑みは、天使に見えた。
こいつは悪魔だが。
「マジか!? いやホント助かった!」
「まぁ、でも早く帰った方がいいかもね。いつ起きるのか、わからないし」
と、いう訳で俺はこうやって帰ってきたのだ。
幸いにも澪奈は俺の部屋で眠っていた。なんで俺の部屋なんだよ。
そして、澪奈をあいつ自身の部屋へ持っていき、現在に至る。
夏月との出来事はまるで、夢のような体験だった。
でも、正夢なのだ。
「信じるしか…ないよな」
*
二連休が終わり、また学校。
そして、夏月が転入してきた。俺とはるひとは違うクラスだったが、休憩時間になると、夏月ははるひ達に校内を案内してもらっている。
で、その休憩時間。
「なぁ! 見たか転校生!」
「見た見た! すげー美人だよな!」
「美少女転校生なんて、漫画とかだけのイベントかと思ってたぜ!」
同学年男子は当然、夏月の話題で持ちきりだった。
無論、彼女持ちの馬鹿三人衆もである。
「いやしかし、ホント美人だったよな」
「そうだな。可愛いんじゃなくて美人。スタイルもいいし、なんかそそられるよ」
「一目惚れとは……突然来るものなのだな」
おい彼女持ちコラ。
もう誰が何を喋ってるとか、どうでもいいや。三人共馬鹿だし。
「泡沫はどう思う?」
どう思うって言われてもな…。
一昨日、その美少女転校生の家で寝てた訳で、変な事言われた訳で。
まぁ、一応感想は言っておくか。
「まぁ、美人だよな」
「何だか興味無さげだな?」
「あぁ、どうでもいい」
正直、夏月が美人とかそんなのはどうでもいい。スタイルがいいのは認めるが。
いや、違う。どうでもいいんだそんな事。
俺の頭の中は、そんな事じゃなかったんだ。
ただの人間じゃないと言われ、不死の身体と言われ、鎌を失った死神と言われ、勇者様と言われ。
今思えば、天地がひっくり返らない限り信用出来ない話だった。
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