deja vu

5/8
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
しかし、はるひは俺の隣…すぐ傍に立ち、俺の顔を覗き込むようにして、笑顔で言う。 「なんか……運命感じちゃうよね」 「何が運命だ。ただ単に、踏み切りが閉じているせいだ」 「でも、その踏み切りが閉じている事自体、偶々であって、私がここに、この時間に到着したのも偶々。瀲那くんが、ここにいたのも偶々。ほら! 偶々が偶々に偶々重なりあった運命! でしょ?」 そんな事、微笑みながら言われても知らん。それに、花の女子高生、十代のうら若き乙女が、あんまり「たまたま」を連発するのはどうかと思う。 と、こんな事を言っても、ただの変態。無論、口には出さないで、呑み込む。 「かと言って、運命なんて感じねぇよ。所詮、偶々は偶々、だ」 「まぁね」 フフッと笑い、はるひは正面を見た。すると少しして、電車が目の前を横切った。 俺は、隣で揺れる際どいスカートを、然り気無く横目で期待しながら見つめながら、ただ電車が通り過ぎるのを待った。……生憎、拝むことはできなかった。        * とにかく、何か解せない。何が解せないのか、と言うと、俺の隣で、当然かのようにして歩いている、はるひの事について、だ。 最近よく、こうやって、はるひと肩を並べて登校している。俺は、別に嫌だという感情は無かったが、はるひは何が目的で、こうやって一緒に登校しているのだろうか。最近は、ちらほらと噂もされ始めているみたいで、はるひ本人は、俺との噂は、嫌ではないのだろうか。……以前に、好きな人がいるとかいないとか、そんな話を不本意だが訊いたし。 「おい夏目」 「それ旧姓」 うっかりしていた。だってこっちのが慣れてるし。 「……春日」 「ってか、なんかややこしいから、はるひって呼んでって言ってるのに」 こうして俺は、三度目の、春日はるひの名を呼ぶ。 「…………はるひ」 「フフッ」 笑いやがった。 「喧嘩売ってんのか!?」 「アハハ! ゴメンゴメン! あー可笑し……で? どうしたの?」 なんか、言う気を削がれた気がする。こっちは、一応心配をしてやってるのに。 「お前さ……この前、好きな人がいるって、言ってたよな?」 「ああ、そんな話もしたっけ」 「……まだ、そいつの事、好きなのか?」 「…………うん、好き」 「そうか」 何故、この時俺は、こんな事を訊いたのか、全く理解できない。と、いうより、元々は噂の事について言おうとしたのだが、何せ、噂の内容的に言い難かった。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!