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しかし、はるひは俺の隣…すぐ傍に立ち、俺の顔を覗き込むようにして、笑顔で言う。
「なんか……運命感じちゃうよね」
「何が運命だ。ただ単に、踏み切りが閉じているせいだ」
「でも、その踏み切りが閉じている事自体、偶々であって、私がここに、この時間に到着したのも偶々。瀲那くんが、ここにいたのも偶々。ほら! 偶々が偶々に偶々重なりあった運命! でしょ?」
そんな事、微笑みながら言われても知らん。それに、花の女子高生、十代のうら若き乙女が、あんまり「たまたま」を連発するのはどうかと思う。
と、こんな事を言っても、ただの変態。無論、口には出さないで、呑み込む。
「かと言って、運命なんて感じねぇよ。所詮、偶々は偶々、だ」
「まぁね」
フフッと笑い、はるひは正面を見た。すると少しして、電車が目の前を横切った。
俺は、隣で揺れる際どいスカートを、然り気無く横目で期待しながら見つめながら、ただ電車が通り過ぎるのを待った。……生憎、拝むことはできなかった。
*
とにかく、何か解せない。何が解せないのか、と言うと、俺の隣で、当然かのようにして歩いている、はるひの事について、だ。
最近よく、こうやって、はるひと肩を並べて登校している。俺は、別に嫌だという感情は無かったが、はるひは何が目的で、こうやって一緒に登校しているのだろうか。最近は、ちらほらと噂もされ始めているみたいで、はるひ本人は、俺との噂は、嫌ではないのだろうか。……以前に、好きな人がいるとかいないとか、そんな話を不本意だが訊いたし。
「おい夏目」
「それ旧姓」
うっかりしていた。だってこっちのが慣れてるし。
「……春日」
「ってか、なんかややこしいから、はるひって呼んでって言ってるのに」
こうして俺は、三度目の、春日はるひの名を呼ぶ。
「…………はるひ」
「フフッ」
笑いやがった。
「喧嘩売ってんのか!?」
「アハハ! ゴメンゴメン! あー可笑し……で? どうしたの?」
なんか、言う気を削がれた気がする。こっちは、一応心配をしてやってるのに。
「お前さ……この前、好きな人がいるって、言ってたよな?」
「ああ、そんな話もしたっけ」
「……まだ、そいつの事、好きなのか?」
「…………うん、好き」
「そうか」
何故、この時俺は、こんな事を訊いたのか、全く理解できない。と、いうより、元々は噂の事について言おうとしたのだが、何せ、噂の内容的に言い難かった。
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