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はるひは俺の顔を覗き込むようにして、にやりと笑いながら言う。
「なーに? なんか意味深…」
「深くもなければ広くもない。浅く狭い、何でもねぇ質問だよ」
「ふぅん…? まぁ、まだその人は、私の気持ちになんて、気付いてないだろうけど?」
何故、最後にクエスチョン・マークが付く疑問文なんだ。それが、お前の予想なら、マークは要らないだろうが。
そして、はるひは、続けた。
「ねえ……このまま、学校サボっちゃおっか」
「何、寝ぼけた事言ってんだ」
「フフッ。寝ぼけた…か。そうかも。惚けてるのかも」
そう、はるひは笑ったが、笑う前の一瞬、どこか淋しいような、切ないような表情をしていた。…あえて俺は、そのことに触れなかった。
すると、はるひは自ら、と言うより、諦め悪く、苦笑混じりに話を続けた。
「でもさ、学校面倒じゃない?」
「面倒なのは解るが、真面目なお前が、それを言う意図が解らねぇ」
「ふむ……意図、か」
「それに、サボりたいんだったら、お前一人でサボれよ。俺は、お前と違って成績やら出席日数やらに余裕が無いんだよ」
それから、しばらくはるひは黙っていた。はるひが喋らないのなら、俺も喋らない。
「…………そっか」
そして学校が目前に迫ってきたとき、はるひはそう、言った。
「やっぱり、私の予想は当たってたっぽい!」
そう、まるで強がるように微笑んで、はるひは踵を返した。
「予想って何だよ夏……はるひ」
「それ旧姓」
「言い直したのに拾うな! ……本気でサボるのか?」
俺は振り向いているのに対し、はるひは俺に背中を向けたまま、言う。
「うん、ボイコット」
「ボイコットねぇ……。まぁ、別に俺は止めねぇけどな。サボりたいんだったら、サボればいい」
俺はそう言って、はるひに背中を向けた。
「まぁ、帰りが一人になるのは、ちょっとつまらないけどな」
言って、歩みを進めた。はるひはどうせ何も言わない。と、思っていたのだが。
「あはっ♪ それってもしかして、淋しいってこと?」
小走りではるひが追い掛けてきて、俺の傍で歩みを合わせた。そして笑顔でそう言った。
……別に俺は、つまらないと言って、淋しいとは言ってないのだが。
「……まぁ、そうかもな」
俺は、はるひの言葉を否定せず、肯定した。何故なら、なんとなく、なんとなくだが、はるひが何だか嬉しそうだったからだ。
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