deja vu

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俺は教室の引き戸を開け、中に入った。教室の中に居た、少数のクラスメートがこちらを向く。 俺はこれが、なんとなく嫌だ。特に、遅刻し、授業が始まっている最中、教室に入るときとか。まぁ、特に気にすることは無いのだがな。 俺が教室に入るのに続き、はるひも教室に入る。そしてすぐにはるひは、仲の良いクラスメートと挨拶をし、会話を始めた。 俺は、自分の座席の机に鞄を置き、椅子に座る。すると、いつもの三人衆が俺の机を囲むように集まった。 「よう! 泡沫」 ちなみに泡沫とは俺の苗字。 ウタカタ レンナ 泡沫瀲那。 俺はこの名前が嫌だ。女々しい。……まぁ、そうは言っても名前なんて一生、変えることは出来ないし、例えそういう機会があっても、俺は名前は変えないだろう。面倒だし。 俺に、気軽に挨拶をした三人衆の一人、俺のちょうど正面に立っている男。 名前は日根。こいつの紹介はこれだけで充分だろう。面倒だし、一気に紹介しておくか。 俺から見て、左側に居る、少し背の高い男は三枝木。そして正面の中背は日根。そして右側の少し太った男は高梁。詳細説明は必要無い、俺の、学校に居るときくらいにしか喋らない友達。 腹立つことに、コイツら全員彼女持ちなんだよな……。俺と同じ帰宅部の癖に。 「よう」 「なあおい泡沫。 お前ってやっぱり、春日さんと付き合ってるのか?」 俺が挨拶を返すと、そう、藪から棒に、三枝木が言った。 確かコイツ……彼女持ちでありながら、理想のタイプは、はるひだとか言ってたな……。 「……だったら?」 俺は、少し真剣に、三枝木を睨むように言った。もちろん冗談だ。からかってやろう。 「はぁぁぁ……良いよな幼馴染みって。なんか幼馴染みってだけで、リーチみたいなもんだもんなぁ」 そう、溜め息混じりに返事を返したのは、高梁だった。……お前もか。 「で? で!? どこまでいった!? どこまでやった!?」 と、興味津々に日根。いっただの、やっただの、まるで中学生の会話である。 「冗談だよ。何で俺が夏目――じゃなかった。は……春日と付き合うんだよ」 何で俺は幼馴染みの名前を、何度も言い直してるんだよ。しかもつい「はるひ」って言いそうになったし。これでアイツのことを「はるひ」って呼んだら、コイツらに冗談と受け取ってもらいかねない。 しかし、この馬鹿三人衆は、俺がはるひって言いそうになったのには気付かず、喜びを露にしていた。
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