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レイン
草木を叩きつける雨
遠くで車が水をはじく
音が聞こえる
自分が濡れながら
子供に傘をさす母親を
ぼんやり眺めながら
頬を走る滴さえそのままにただ立ち尽くし続ける
やがて日は落ち暗闇が
あたりを飲み込み
ネオンが灯る頃
何かに追われながら
家路に向かう人達の群はその目に何を映す
そんなことをボンヤリと考えながら 少し歩き始めた
今の僕に傘はいらない
この渇ききった僕の心をずぶ濡れの雨が癒やすから
冷えきった心を温める
この雨がどうか昨日までのあの記憶を流してくれればと願う
幼き頃もこの同じ雨を
確かに見つめ打たれながら 歩いたはず
なのに何が違う
言葉に出来ない叫びが
苛立ちを連れてくる
この降り落ちる雨さえ
悲しみの音を奏でる
大人になるたびに人は
何かを手に入れながら
弱くなってゆく
君を失くしたことが悲しいのか 裏切り続けた君が憎いのかも
教えて欲しい答えも
やがて忘れ晴れ渡る日がくると呟く
濡れた靴でかまわない
すれ違う人が振り向き差し出そうとする優しさのハンカチ
この苦しみも痛みも拭いとってはいけないから
やがて来る太陽まで自分を抱きしめる
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