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四月末。
ペナントレースが開幕して一ヶ月が過ぎようとしていた。
各球団が開幕前のシミュレーションと実際の結果との埋め合わせに躍起になっていた。
怪我による主力の離脱と、逆に開幕には間に合わなかった選手の復帰。
まだ表には出ていないが、足りない戦力を補強しようと水面下でトレードの交渉が行われていた。
そんな中、新戦力獲得を目指すという毎年の構図に一つの変化が見え始めていた。
一般的に、日本球界にやってくる助っ人外国人選手の多くはメジャーリーグのマイナーから補強ポイントに合わせて海外スカウトが発掘してくる。
中には東京ジャイアントのレックスのような自らの意思でメジャーからやってくる者もいるが、それは稀なケース。
が、今年は少々違っていた。
開幕メジャーから外れ、マイナーリーグスタートを告げられた選手をスカウトが発掘してくるのではなく、
『選手側からスカウトに自分を売り込んで来ていた』
本来マイナースタートの選手は貪欲にメジャー昇格を目指す。
それは何故か。
来日してきた選手たちを見てみると、その謎は解けた。
シーズン開幕から新たに来日してきた選手。
それは、第二回WBCに各国の代表として戦った選手たち――その中でマイナースタートした選手たちだった。
WBC優勝国である日本へ、挑戦に来ていた。
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