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意見交換会が終わりになろうとしていた丁度その時、遠く離れたとある場所で、
「いや~参った。まさかマスコミにここまでしつこく付きまとわれるとは思わなかったな~」
屈託のない笑みを浮かべながらもやや疲れた様子が伺える青年。
今や時の人となっている、東京ジャイアント相手にノーヒットノーランを達成した男、広島シャークスの黒須神流だ。
「それは仕方ない。お前はそれだけのことをやったのだからな。一時的な騒ぎだ。我慢しろ」
「うわっ、もう少し優しくて思いやりのある言い方ってのがあるんじゃないですか? ねぇ古山さん」
「これがお前期待の優しくて思いやりのある言い方だ。俺の中ではな」
「ひ、ひでぇ~」
「こうして話を聞いてやっているだけでもありがたく思え」
黒須の軽い愚痴を聞きながらも目線は手元の雑誌に落としているややインテリな感じのする男――古山樹(ふるやま みき)はやや面倒くさそうに言った。
紳士的に見えて実は挑発的な古山。
広島シャークス所属の、キャッチャーだ。
「まぁ、確かにお前が言うように世間が騒ぎすぎだとは思っているよ」
「そうでしょそうでしょ?」
「ああ。結果的に打たれなかっただけで打たれても不思議ではなかった球が何球かあった。打者が打ち損じただけでお前の手柄じゃない」
「やっぱりひでぇ……」
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