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(ん~湊って、何を考えているのか分からない、もっとミステリアスな奴だと思っていたが……意外と弄りやすい奴だったのか)
珍しいものを見たとばかりに、島津司(しまず つかさ)はその様子をロッカールームの端の方で見つめていた。
今年でプロ入り18年目のベテラン左腕投手。
やや後方へ後退した頭髪が、年齢を感じさせる。
神戸オリオンズに高卒ながらドラフト二位で大型サウスポーとして期待され入団。一年目から開幕ローテーション入りし注目された。
まだタローが日本にいた頃はチームメイト。リーグ制覇と日本一の原動力としてその年に最多勝のタイトルを獲得した。
FAで九州レックスへ移籍。開幕から七連勝するも、肘の故障で戦線離脱。その後二年一軍登板はなく、トレードで各球団を転々とし、昨オフにはついに戦力外となるが、東北フェニックスに拾われた。
先発六人目の枠を争っていた真木、八巻、ウィルソンの三つ巴がまさかの共倒れ状態となり、二軍で安定した成績を残していた島津が今日付けで一軍登録された。
若手の多い東北フェニックスにあって、珍しいベテラン投手である。
「……島津さんはどう思います? 同情する必要ないですよね?」
声をかけてきたのは堀ノ内。
一軍に上がってきたばかりで、いまいちチームの雰囲気に溶け込めきれていない島津を馴染ませようという配慮の意味もあるのだろう。
「ん~? 建前は泣かせるような真似はするんじゃない。本音はふざけんなこの野郎、か?」
「流石はベテラン。10年間アタックし続けた末にやっと結婚した人が言うと重みが違いますね」
「……堀ノ内、お前後でしばく」
「へ~、それなりにチームの雰囲気も良いみたいだな」
ロッカールームの入り口から中の様子を覗いていた井原は満足げに呟いた。
「予定よりも若干――かなり早いけど、久々に大博打、やってみるか」
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