8903人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに試合以外でのあいつは信じられないくらいに貫禄と威厳がないからな。ユニフォームを着ていてもレプリカユニフォームを着ている中学生に見えるし」
小湊も大河も、その意見には同意する。
「さてと、本来ならしばらくは一軍の雰囲気に慣れてくれ――と言いたいが、そんな余裕はない。一軍に上がってきたからには、早速活躍してもらうぞ」
先ほどまでのふざけた空気はどこへやら、緊迫した空気が監督室を包み込んだ。
「小湊。お前にはいきなりスタメンだ。九番キャッチャーで島津とバッテリーを組んでもらう」
「島津さんと……」
「二軍では、何度も組んでいただろ?」
「……いきなりの大役、了解じゃ」
僅かに身震い――武者震いという奴だ。
これまで自分がやってきたこと、伊吹から教わったこと。
それを実行するだけだ。
「大河」
「は、はい」
「二軍での活躍は聞いている。ここぞという場面になったら迷わず使うから、いつ出番が来ても行けるように、しっかり準備していろよ」
「――はい!!」
力強く返事をする。
二軍の開幕戦でミスをして、今年で最後と諦めかけていた時、井原に一筋の光を見出だしてもらった。
下では結果は残した。
次は、上で結果を出してみせる。
「それから、試合が始まる前にちゃんと一軍のメンバーに挨拶しておけよ? ――勿論湊の奴にもな」
そう言って、今度は笑いを堪えず爆笑する井原。
最初のコメントを投稿しよう!