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日本中が感動した。
日本中が、その瞬間に酔いしれた。
国別野球対抗戦――WBC。
見事連覇を達成した日本代表選手たち。
一つのチームに纏まった彼ら。
互いを信頼し、託し、繋いだ。
そんな彼らも所属チームに戻れば優勝を争うライバルとなる。
『湊選手、メジャーリーグに興味はないんですか?』
帰国後に開かれた記者会見。そんな質問が湊に向けられた。
『世界一レベルが高いとリーグで自分を試してみたいとは思いませんか?』
湊がメジャーリーグで通用するか見てみたい。
そんな好奇心から出た質問だ。
『残念ですが、僕はメジャーリーグには行きません』
ハッキリと断った。
『確かにメジャーには凄い選手が一杯いてやりがいがあるかもしれません。でも、僕にはまだまだ日本で学ぶことがある』
そう。
湊の野球選手としての人生はまだまだ始まったばかり。
正直未熟さは自分が一番理解している。
まだ自分は多くの人に支えられ、辛うじてプロとしてやっていっている。
その支えてくれた人全員に恩返しをし、一人立ち出来なければメジャーリーグに挑戦など烏滸がましい。
『将来的にそうした選択肢もあると思いますけど、今は日本で全力でやらせてもらいます』
悪戯っぽく湊は笑った。
僅か、一週間前の出来事。
不思議だ。
昨日の事のように思い出せるのに、何年も前の出来事にも感じる。
「ペナントレースが、また始まるんだ……」
あっという間に駆け抜けた一年間。
あの忙しさが、湊に新しいシーズンが始まるという実感を感じさせなかった。
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