第一章『開幕前のサバイバル』

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ここで一人の投手を紹介する。 四年前、東北フェニックスに横浜スターズからトレードでやってきた堀ノ内宗太。 173cmと小柄ながらも豪速球を投げる右腕として一時期注目された投手だ。 低迷期にあった東北フェニックスの監督に就任した井原保が、『中継ぎの軸に欲しい逸材』と評して獲得した選手だ。 丁度、湊一成が入団した年に移籍してきた。 最初の一年は中継ぎでフル回転したが、チームは最下位。 小さな身体を目一杯使うフォームから重い球威を誇る速球を武器に存在感を示した。 が、翌年に悲劇が起こる。 移籍二年目、四月の最終戦。 ピッチャーライナーが右肩を直撃。 怪我そのものは軽い打撲傷で済んだが、蓄積していた疲労が加わって肩痛の為二軍へ。 七月には復帰する予定だったが、今度は交通事故に巻き込まれて右足を複雑骨折。 戦力外寸前と囁かれたが、 『あいつには中継ぎの軸になってもらわないと困る』 という井原の厚い信頼によってチームに残り、二軍で一から身体を作り直した。 徹底した肉体改造を行っていた湊に匹敵するメニューをこなし、訪れたプロ11年目。 堀ノ内自身、今年がラストチャンスと考えていた。 昨シーズン中継ぎでフル回転したルーキーの新城。 本来ならば、あのポジションは堀ノ内のポジションだ。 その新城は今年から先発ローテーションに入る。 林原に佐藤と、ライバルは多いが開幕一軍は譲れない。
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