第一章『開幕前のサバイバル』

4/25
前へ
/809ページ
次へ
堀ノ内の代名詞は抜群のノビを誇るストレート。 小柄ながらも最高で147km/hを記録した。 が、一番の強みは右投手ながら左打者を全く苦にしないことだ。 むしろ左打者の方が得意だ。 その理由は単純明快。 堀ノ内の投球は強気の内角攻め。 左打者と対戦する際には対角線――クロスファイヤーで果敢に内角を思いきって攻める事が出来る。 彼と対戦した多くの左打者は、 『あの内角攻めが厄介だ』 と語る。 対左の中継ぎ投手が不足している東北フェニックスにとって、頼もしい存在なのだ。 (うっし、これまでで一番の仕上がりだ) 今日は千葉マリナーズとのオープン戦。 回は既に四回を終了している。 試合前のミーティングで、今日は五回から出番だと伝えられている。 肩は仕上がっている。 気合いも十分。 後は出番を待つだけだ。 チラリとブルペンの端に目をやる。 東北フェニックスの守護神、湊一成の姿がそこにあった。 WBC連覇に貢献した優勝投手。 あの小さな体のどこにあれだけのことが出来る力があるのだろうか。 負けられないという気持ちと同時に、僅かながら嫉妬が沸き上がってくる。
/809ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8902人が本棚に入れています
本棚に追加