第一章『開幕前のサバイバル』

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開幕一軍を目指す堀ノ内の出番が近づく中。同じように開幕一軍を狙う投手がいた。 社会人卒の三年目、草壁康太。 大型サウスポーとして入団するも、ここまで結果を残せていない。 24歳で入団し、現在は27歳。年齢的なこともあり、そろそろ結果を残さないと後がない。 身長193cm体重98kgと体格は恵まれている。 最高球速は150km/hを超えるが、如何せん思い切りが足りず、際どいコースを狙うと棒球になってしまう。 身体的には問題ないが、精神的にプロで通用しない。 意外かもしれないがそんな選手は割と多い。 今日の試合、先発として四回を投げ、ツーランホームランで二点を失うも、これまでにない手応えを感じていた。 「草壁。中々良い投球でしたね」 「ああ。何と言っても思い切りが良くなったな。速球も走っていたが、それ以上にあのフォークが良いな」 絶対数が少ない左の速球派投手。しかもフォーク使い。 スライダー全盛期の中で稀少な存在と言える。 「だが、何と言ってもチェンジアップをモノにしたのが大きいな。タイミングを外せるし、速球が活きる」 長いイニングを抑えるにはまだ不安が残るが、 「一番の悩みだった左の中継ぎが出てきたかな?」 「次の堀ノ内の出来も気になりますね。右ですが、対左として使えますし」 何にせよ、楽しみなシーズンが期待できる。
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