第一章『開幕前のサバイバル』

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野手陣ではこれまでにない程の充実を見せている。 昨シーズン活躍したメンバーを中心に役者は揃った。 中でも注目なのがセンターラインだ。 センターにはコンバートした――といっても元々内外野に関係なく守れる――佐々塚。 セカンドには守備に定評のある有栖。 そしてショートには、球界唯一の左投げの金城が守る予定となっていた。 左投げの金城がショートを守ることについて井原は、 「左投げだけど一番上手いし、問題ないっしょ」 と笑っていた。 自身が型破りの左投げの捕手だっただけに、その辺りは寛容だ。 実際、昨シーズンにショートを守った佐々塚よりも的確で上手かった。 何より、体の使い方が上手い。絶対不利なはずの左投げであることを忘れてしまうような動きだ。 加えて二遊間を組む有栖との阿吽の呼吸は抜群だ。 若手の活躍――打撃力が目立った昨シーズンとはまた違う野手陣。 井原の頭の中には、新しい東北フェニックスの姿が完成しつつあった。 残る心配事は一つだけだ。 WBC参加メンバーの消耗具合である。
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