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すれ違い
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颯太『隼人ー…遅刻するんですけどー』
遅刻の言葉にパチリと目をこじ開ける、気が付けば朝で洋服を着た颯太が俺を覗き込んでいて。
翔平は自分の腕時計を見ていた。
いつもと変わらない態度だ…って当たり前だけど。
つか今何時だ!?
俺は慌てて携帯を取り出して時間を確認する、時計は朝礼集合15分前で。
一瞬頭が真っ白になった、早く動かなきゃならないのに身体と思考が上手く動かない。
颯太『隼人ー?ケンカ売ってる?』
満面の笑みで言われた、確実にいつもの仕返しだろうと思う。
こんないっぱいいっぱいの時に限って神経を逆撫でするんだコイツは。
おかげで目が覚めたけど。
隼人『ケンカ売ってんだったらどうすんだ?』
小バカにするように口の片端を上げて笑うと、颯太は嬉しそうに笑って側を離れた。
つっても何を着るかな…
モソモソと布団から這い出ると、自分のカバンから衣服を漁り目についたズボンなどを取り出しその場でジャージを脱ぎ捨て着替えを始めて。
颯太『隼人~俺、先行くわ、隼人の代わりに由衣ちゃん観察にいくから。』
ウキウキとした様子で言うと、敬礼のポーズをしてから部屋から出て行き。
俺の返事も聞けよ…大した返事はしないけど。
翔平『隼人』
隼人『うぉ!?…翔平、いたんだ…マジびびった…。』
一人台風の颯太が居なくなったから自分だけだと思っていたら、背後から翔平の声が聞こえ思わず大きい声で反応してしまい。
すると翔平はすまなそうにこちらに視線を送り、俺まで恐縮して。
着替えを続けながら話を聞くことにして
隼人『驚いて悪かったな、翔平も俺に気を使わず行けよ。ホント遅刻するぞ』
早朝の出来事を思い出して気まずさから目をそらし、苦笑気味にそう言って。
でも翔平自身は真っ直ぐに俺を見据えていて、居たたまれなくなる。
翔平『今朝は…ゴメン、なんか俺変なこと言ったみたいで。ほんとは気分を害したんだろ?』
目を反らすことなく俺の瞳の中をを見つめていて、心を探られているような気分になる。
どす黒くて醜い形をした感情
嘘つきで最低で弱虫で変態で
そんな俺と向き合う真っ直ぐな翔平。
隣にいるだけで罪悪感が募るのに、好き。
一緒にいて、言葉を交わすだけで浄化される気がする。
例え勘違いだとしても。
視線に耐えきれず俯く、逃げ出したい気持ちで胸が苦しい。
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