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「好き、好き、大好き!」
目の前にいる『彼』にそう言いながら、満面の笑みを浮かべる。
彼は心底うざったそうな表情を浮かべ、溜め息を吐いた。
――うん、いつも通りの反応だ。
その事が嬉しくて、思わず頬が緩む。
それを見て、彼は奇怪なものを見るような目で私を見つめてきた。
「お前、何薄気味悪い笑み浮かべてんの?」
「やだ、そんなに見つめられると困る……」
私の言葉と彼の言葉が重なって、その場に暫しの沈黙が奔る。
それを破るのは、『いつも』私。
「偶然にも言葉が重なっちゃうなんて、これ、運命だよね?」
おどけたように明るくそう言い、彼を覗きこむ。
そこにはいつも通りの彼の表情。
……諦めたような半眼の瞳に、冷たい視線。
この、冷たい視線には今も慣れることができない。
いつも一瞬、体が凍えて竦み上がる。
でも、それでも……止められない。
このうざったいような言動も……君への想いも。
「……あのなぁ、俺は……」
いつも、冷たい視線の後にはこの言葉。
何を言われるか、なんて分かり切ってる。
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