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第一死『浮気は罪です』
6月12日(月曜日)
「ぐさっと刺された夢を見たんだ」
僕は夢の話を悪友の織守(しきもり)大樹(たいき)に話した。大樹がうんうんと頷きながら僕の話を聞いていた。
「ふ~ん、なんか、聞いたことがあるなぁ、その話……」
「本当? あれ? 初めて言った気がするだけど」
「俺の気のせいかな……?」
少し恥ずかしい。もしかしたら大樹に僕は5回ぐらい言っているかも知れない。記憶力が低下しているのだろうか。
ついでに夢の話はこうだ。
僕の彼女、香村みつきに包丁で腹を刺される夢だ。至ってシンプルでよくありそうな夢だがもの凄い痛みがあった……。
あまりに痛かったのである。僕はその痛みで目を覚ましたのだ。
「まぁ、そんな夢の話なんかどうでもいい、それよりももっと面白い話がある!」
大樹が目をキラキラさせて僕を見ていた。
「聞きたいか? 聞きたいですよね? 聞きたいよなぁ? よし、聞かせてやろう!」
半強制的に僕は大樹の話を聞くはめになった。
「なんと! 転校生が来るのだ!」
「へ、へぇーそうなんだ」
「あんまり、驚かないな?」
「えーと……まぁね」
だいたい大樹の言うことの7割は嘘で僕は良く騙されていた。例えば、小学生の頃に大樹に『月が地球に落ちるから遼は早く逃げろ!』そう言われ、僕は街から逃げた。
俗に言うこれが家出というやつで、次の日僕は親に散々怒られてしまった。
それ以来、僕は大樹の話を疑うようになった。
だから僕は大樹に話を合わせることにする。
「えーと……? その転校生はどんな子なの?」
「おお! 良く訊いてくれた! なんとなんと、超美少女なんだ!」
「へぇー?」
「……美少女なんだっ!」
重要だから2回言っていた。
「おいおい? やっぱり興味ないのか? まぁ、したかないか……。だってお前には……」
「ねぇねぇ? 遼くん? 何の話をしているの?」
僕の後ろからギュッと抱きしめられる。柔かく嬉しい感触が後頭部に伝わる。
「みつきか?」
「うん! みつきだよっ!」
にゃははと笑いみつきが話に加わってくる。肩まである艶々の黒髪。ルックス、スタイルともに申し分なく、クラスのアイドル的存在である。本人は知らないがファンクラブまで存在している。
また勉強、スポーツもクラストップである。それがこの女の子、香村(こうむら)みつきだ。
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