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僕の言葉を聞くとみつきはにこっと僕に微笑んでいた。良かった、どうやらわかってくれたらしい。
「遼くん?」
「何、みつ……」
「浮気したら……絶対許さないからね……」
キーンコーンカーンコーン!
僕の耳にホームルームの始まりのチャイムが鮮明に聞こえた。いやそれしか、聞こえなかった。
ガラガラ
ドアを乱暴に開き、スーツ姿の男性教員が入ってきた。髪が長く後ろで束ねている。歳は20代後半で名前は、藤宮(ふじみや)彰(あきら)。
元暴走族と言う噂のある、不思議な先生である。またそのルックスから女子からも人気が高いらしい。
「止めろよ、柚木。照れるじゃねぇか」
と僕の顔を見て先生は、にやりと笑いそう言った。相変わらず、よくわからない人だ。
「んじゃ、ホームルームを始める。クラス委員! 号令を頼む」
先生は一番前に座っている女の子をちらっと見る。清水(しみず)さんだった。
「だから、私クラス委員じゃないのに~」
本当に清水さんはクラス委員ではないが人をまとめるのが上手なのでいつまにかクラス委員になっていた。
ついでに男子のクラス委員は、いつの間にか僕になっている。
清水さんはぶつぶつ文句を言いながら『起立ー』、『礼』、『着席』を言う。結局断りきれなかったらしい。
「さて、おはよう。特に用事はない。だが言いたいことが一つだけある」
みんなごくりと唾を呑む。
一体何を話すんだろう……?
すうと息を吐き、先生は口を開く。
「万引きとかオレオレ詐欺とかするなよ。エロサイトとか見るなよ。実際あまりエロくない。出会い系サイトでは絶対に出会いないから注意しろ」
しーんと静まる教室。
こ、この教師は一体何が言いたいんだ!
それに一つどころではなかったし、しかも個人的な話だけじゃないか。
多分これは推論だが、昨日の休日に先生が体験したのであろう。
「先生ー! それよりももっと重大な事があるのでは?」
大樹が挙手し、先生を促した。
先生は何かを思い出したように話始める。
「そういえば、このクラスに転校生がくる」
ざわざわとクラスがざわめく。特に男子達がそわそわしていた。
「野郎ども! 喜べ! 転校生は女の子だぁ! いゃっほぉおお!」
先生の言葉にクラスの男子たちの興奮は絶頂に達した。
「マジかよ!? いょっしゃああ!」
「先生ーっ! マジすか!?」
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