785人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ、大マジだ!」
「出会い出会い! 俺の出会いがキターッ!」
「こらぁーっ! 浮かれるな! バカ男子どもっ!」
そんな男子の姿を見て浅川さんが怒鳴っていた。
「まぁまぁ、しじみん……落ち着いて!」
男子の一人が浅川さんを宥めようとする。
「名前で呼ぶな!」
浅川さんに一言で男子生徒はしゅんと項垂れる。
この女の子の名前は浅川しじみ。ニックネームでもアダ名でもない。本当に『しじみ』と言う名前である。
「えと……しじ、じゃなかった。浅川さん、少し落ち着いて」
「さすがクラス委員~ひゅ~ひゅ~」
先生が楽しそうにはしゃぐ。
「だから、私はクラス委員じゃないの~。先生が煽ってどおするのぉよ~」
「てへぇっ☆」
可愛く舌を出して笑う先生。
「イライライライライラ……」
浅川さんがそのようなことを口にしていた。
「キラッ☆」
先生は親指、人差し指と小指を立ててにこにこする。
その姿を見てさすがの清水さん呆れていた。
僕も呆れていた。いや、クラス全員が呆れていた。いつものことだ。
「こら! バカ教師! 清水さんを困らせるな!」
「しじみん酷いよぉ~しくしく(笑)」
か弱い女の子ように泣く先生。もちろん泣いていない。
その行動は、ただ浅川さんに火に油を注ぐだけだった。
バン!
机を叩き、浅川さんが完全にキレた。
「泣き真似するな、バカ教師! (笑)って何? ふざけてるの! だいたいあんたが私の名前をクラスにばらすからこうなったのにぃ~!?」
そのことは僕も覚えている。
確か先生がクラスを変えてから初めてのホームルームで……『浅川の名前、しじみらしいぜ! 浅川しじみんだ! 今日から浅川はしじみんだ!』と大きな声で叫んでいた。
もちろん浅川さんはキレた。かなりキレた。あの日は清水さんが大活躍していた。
浅川さんはさらに机を叩き罵声をあげる。がるるると唸りまで聞こえる。
「浅川さん、落ち着いてぇ! 先生に、先生に罪はないの……ぐすん……あれは……ね……」
「わ、分かったから分かったから……な、泣かないでください」
清水さんの泣き声で浅川さんが申し訳なさそうする。
「清水さんは優しいな。浅川、少しは見習えよ」
「あなたが一番見習って下さい」
「ふふ、それが出来たら苦労はしないさぁ……。さて、クラス委員? 転校生を呼んで来てくれ」
最初のコメントを投稿しよう!