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それから数時間が経過した。
「ここを渡れば学校に着くわよ」
「いや……ここって港ですよね?」
准が車を降りながら聞く。
耳に入るのは優雅に空を飛んでいるカモメの鳴き声とさざ波。
そして何より人気がない。
港のはずなのに何故こうも人気がないのか。
檜原先生はドアを閉めて、
「そうよ。そしてここから学校に行くの」
(先生!! 船が一隻も見当たりません!! ま……まさか……泳げというのか!? 新たな罰ゲームか、これは!?)
そう二人が思っていると檜原先生はポケットから白いペンを取り出した。
隼兎は首をかしげ、
「先生、それは?」
「ん? ペン」
「いや、そうじゃなくて何でそんなもん出すんですか?」
檜原先生はあぁ、と言う声と共に手をポンと叩くと、
「そう言えばまだ言ってなかったわね。いい? 見ててね」
そう言うと、檜原先生は空中に何か書き始めた。
二人は不思議そうな顔で見ている。
すると檜原先生が空中に書いた文字が浮かび上がってくるではないか。
「¨船¨発動」
次の瞬間、檜原先生が¨船¨という字に手を翳すと、意志を持ったかのように海に向かっていき、数秒の間漢字が光り輝いていた。
そしてうねうねと動いたかと思いきや、それは船の形をかたどっていき、どこにでもある船と化した。
二人はあんぐりと口を開けて、自分の目の前で起こったことに目を丸くしていた。
「あなた達が今から行く学校は、今のような文字を使うのよ」
柔らかく微笑むと檜原先生は船へと歩き出した。
二人も一瞬遅れて、走って追い付く。
今の光景を見た時の二人の気持ちは、恐怖という文字はいつの間にかなく、好奇心が九割を占めて、一割が何なんだろうな?という割合だった。
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