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「あとは陽野君だけね。えっと……」
「先生。ここも空いてるわよ」
また一人の女子が手をヒラヒラとさせている。
そこは同じように教卓から見ると、一番右の列の最後尾に当たる場所。
この女子は、頭のてっぺんらへんでミルク色の髪を、赤いリボンのような物で結んでいる。
「じゃあ陽野君はあそこね」
「了解ー」
隼兎は軽い足取りで自分の席へと向かった。
ガタンとイスを引き、座る。
(ふぅ……一応挨拶でもしとくか。)
隼兎は隣に座っている、先ほど手をヒラヒラしていた女子に話し掛ける。
「なぁなぁ」
「何よ?」
ギロッと睨みつけられた。
「いや別に何もないんだが、まぁ挨拶はした方がいいかなぁって」
「あっそ」
(うっ……関わりにくいな……。)
この女子は机に肘をつき、顔を手のひらの上に乗せている。
「あっ、そういえば名前聞いてなかったな。名前教えてくれよ」
「嫌よ」
(即答っすか……。)
「何で?」
「べっつに~」
(気分の問題ですか。まぁ別にいいけどよ。)
「まぁ隣同士、よろしくな」
「はいはい」
(何だかなぁ……。ペースを持っていかれるんだよなぁ、こういうタイプ。)
「あっ、そうだ。一つ聞いていいか?」
「何?」
隼兎は先ほど教卓の前に立って、違和感を覚えた事柄について聞いてみた。
「何で……このクラスは男子がいないんだ?」
そう、教卓の前に立った時に覚えた違和感。
それは男子の姿がどこにも見当たらないことだった。
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