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部屋の中に入るとまず目に入ったのが辺り一面の白い壁。
そしてその中心にある丸くて白いテーブル。
そして白い背もたれのあるイスも二つある。
ドアを開けたすぐ左には風呂場と洗面所、それにトイレがある。
そして少し進むとベッドが二つ用意してあった。
窓が開いているのか、シルクのカーテンがなびいている。
「豪華過ぎるだろ!?」
この光景に准は思わず驚きの声を上げる。
どこぞの一流ホテル並みだ。
「ホントに凄いな……」
隼兎はそう呟きながらカーテンに近付く。
そしてカーテンを開くとそこには海の風景が──
「うん、ない」
あるのは校舎だけ。
残念ながら海が見えるのは凛とミズキの部屋側の方らしい。
隼兎は小さなため息を一つつき、
「疲れた」
と、今日という一日に最も相応しい言葉を口にしてベッドに座る。
ベッドはとても柔らかく、弾力性がある。
だが隼兎はそんなことは気にせず、座っていた状態からそのまま後ろに倒れた。
准は准で風呂場を覗いていた。
トイレと兼用で風呂場とは防水カーテン一つで遮られている。
「ふむふむ、なかなかいいホテルではないか」
言っておくがここは寮である。
お忘れのないように。
「何やってんだ、あいつは……」
隼兎は寝た状態のまま顔だけを向け、准の方を見る。
すでに太陽は水平線の彼方へ沈もうとしている為、真っ赤な夕日が部屋に綺麗な光を差し込んでくれる。
だがやはり夏なだけに蝉の鳴き声は絶えず止まない。
「はぁ……」
隼兎は天井を見ながら、もう一度ため息を吐く。
だがこれは先ほどのように疲れた、という意味ではなく、感傷に浸っているのだ。
蝉の鳴き声は人をいつも悲しい気持ちにさせる。
なぜこうも悲しい気持ちになるのかは……分からない。
とにかくこれで一日目は無事、終了した。
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