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さて、状況が掴めないまま次の日がやってきた。
普通の者はいつものように緩い坂を登り、いつものように先生に挨拶をする。
だが普通ではない者は、その緩い坂も何かいつもより急な坂に感じ、いつも通る校門も輝かしく思えた。
「おはよう」
「おはようございます……」
「どうしたの二人共? 元気が無いわよ?」
¨あんたのせいだろ!!¨とは口が裂けても言えない。
准と隼兎は「別に……」と口を揃えて言うと檜原先生は柔らかな笑顔を浮かべ、
「それならいいけど……」
と言った。
そして檜原先生は自分の車に乗るように二人を促した。
「なあ隼トゥー、何処に行くんだ?」
「誰が隼トゥーだ!! まあ……どうせロクな場所じゃねぇだろ」
二人は檜原先生の車に乗り込んだ。
数分後、檜原先生が運転席に乗り込んできた。
「お待たせ」
「先生、授業はいいんですか?」
准が不思議に思って聞いてみた。
すると檜原先生は左手の人差し指を立て、
「それなら辞めちゃった!!」
「……えっ?」
(今、なんと……?)
「辞めたって……」
隼兎が呟く。
「細かいことは気にしないの。さぁ、行くわよ。あなた達の新しい学校へ!!」
(これってさぁ……一般的に¨拉致¨っていうんじゃねぇの?)
二人の心の中では好奇心が五割、恐怖が三割、あとの二割は何なんだろうな?といった感じである。
とにかく二人の運命はニコニコ顔で運転しているこの女性に握られているということだ。
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