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どうやら台詞は一切ないらしく、先輩もしぶしぶ承諾してくれたのだ。僕はというと幸運にもなんの配役にも当たらず見物できる立場になった。
場内がうす暗くなり、舞台を覆っていた幕が上がる。
女性の叫び声とともに先輩扮するジャックと先生演じる包帯男が端から登場した。
ジャックは凶器（もちろんおもちゃである）を振り回し歩いてくる。立っていたマネキンちゃんをその凶器で殴り倒し生き血をすする。そうそう。言い忘れていたが、このジャックは殺害した人間の生き血を吸って生きているという設定なのである。
ただ今回はペットボトルに入った液体（炭酸を抜いたコーラらしい）を生き血に見立てて飲むという演技になっている。
そして飲み干した後歓喜の雄たけびをあげるという段取りだった。
が、ジャックは飲み干したにも関わらず雄たけびをあげるどころか、のどをかきむしっている。
コーラの炭酸は抜けているはずなのになぁ、と思っていたがもしかしたら先輩のアドリブかと僕は思った。
なんだかんだと言ってノリノリなんじゃないかと失笑していると予定通り雄たけびをあげた。
『があああぁぁぁぁ！』
あちゃー。と正直思った。全然舞台とあっていないじゃないか。歓喜の雄たけびのはずなのに苦しそうな声をあげてしかも前のめりに倒れこんでしまった。
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