不可能犯罪

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その夜、また事件が起こった。 井伊 咲が殺されていたのだ。 現場は倉庫の隣の今は使われていない一室。使っていないので施錠はされていなかった。発見者は女将さん。荷物を取りに寄った時、偶然遺体を発見したようだ。 遺体には心臓に達する傷が一箇所。ナイフが胸に突き刺さっている状態で発見された。 ナイフを引き抜いていない為返り血はほとんど浴びていないと思われる。 気になるのは被害者のポケットに入っていた紙だった。 文面はこうだ。 本日 9時に倉庫の隣の部屋に来られたし。 この文章だけである。 被害者のポケットから出てきたのでおそらく犯人から呼び出された可能性が高い。 検視の結果、死亡推定時刻は午後7時から午後10時までの3時間だということだった。署に帰ればもっと詳しく分かるのだがという報告が来ている。 早速、当時のアリバイを3人に聞くこととなった。 話を聞くとどうやら轟と三上は7時から10時まで、そして脇は7時半から10時まで一緒に食堂で飲んでいたらしい。殺人事件に巻き込まれとても寝付けないからと自然と3人食堂へ集まったようだ。 そしてその場には女将さんもいた。女将さんの証言により3人のアリバイの裏がとれた。 『これは困ったことになったね、木津谷くん。』 『はい。まったくです。』 なぜなら、犯行時刻だが被害者が呼び出されたのは9時だと分かっている。つまり9時前後にアリバイのない人間が怪しいということになるのだが全員完璧なアリバイがあるのだ。 つまり犯行時刻と思われる時、誰も被害者を殺害することは出来なかったということになる。 僕は頭を抱えた・・・
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